年齢を重ねてから、ダレン・シャンを読んで、今回特に味わい深く思ったキャラが、Mr.Tallだ。
以下ネタバレ。
終盤Mr.Tallが亡くなる場面は、突然すぎるだとか、ご都合主義すぎるだとか、あちこちで評判が悪いけれど、今回読んで、なんとなくMr.Tall があそこで死を選んだ気持ちrが分かる気がする。
直前に彼は、もう24時間以内に、闇の帝王が出現すると預言していた。
Mr.Tall は、見たくなかったのだと思う。二分の一の確立であてもダレンが闇の帝王になるところを。何よりいずれにしろ、闇の帝王は必ず出現し、自分と親しかったバンパイヤは滅ぼされ、人間も滅びる。そこにも彼のCirque Du Freak の仲間も含まれる。直前にダレンにせがまれ将来を見て、自分の存在も見つけられなかったか、またはいても幸せではないか。人間もフリークの仲間もいない世界にいるMr.Tallが想像できるだろうか?
その
繊細なMr.Tall は、もうそんな世界を見たくなかったのだろう。父親へのせいぜいの反発もあったかもしれない。
終盤で亡くなった時に、Mr.tall がMr.tinyが作った二人の子供のうち、行方が知れないと言われていたエバンナの弟だったと分かって、みんな驚いた。わかると、彼の全て分かっている様子、予言や人の心が読めるらしい特性、寿命が無い様子、Cirque Du Freakにリトルピープルがいた事といい、なるほどと腑に落ちるのだけれど、その瞬間まで誰もそんなこと考えなかったほど、Mr.Tallは不思議なキャラクターだった。
Mr.tall は、エバンナと同時にオオカミのお腹から生まれたエバンナの弟だけれど、エバンナがバンパイアかバンパニーズの子供を産むという使命を持って生まれたのに対して、Mr.Tall は、使命が与えられていない。彼は自分の生きる意味を自分で見つけなければいけなかった。
そうしてさまよったMr. Tallは、エバンナと同じく人間社会に俗していない。たった一人、現在よりずっと閉鎖的だった中世以前の人間社会をさまよい、全くゼロから自分の存在意義を自分で見つけ、自分の存在場所を自分で作らなければいけなかった。時々彼を受け入れてくれる人がいても、人の人生は短い。あっという間にいなくなる。どれだけ孤独だっただろうか。
どういう経緯でフリークと出会い、Cirque Du Freak を作ったかはわからないけれど、
人間社会に入りようがない孤独なMr.Tallが、彼の能力を人が戦う武器として使うのではなく、心を合わせたのが、人間社会では浮いてしまい排除されるフリークだったというのは、そこに彼の繊細さと人間愛があふれていると同時に、破壊と混乱を好む残酷な父親とは違う道を進むことを選択した彼の強い精神の表れだ。そしてCirque Du Freak として、人間社会の中で自分自身の存在意義を作り、フリークの居場所を作った。
Mr.Tiny も名前も外見も生き方も自分の逆を選択するMr.Tallの意思を認めて、リトルピープルをつけるところに、子供に対する大人の愛情がある。
ところで、Mr.Tall は亡くなる直前に、30年前からラーテンが亡くなる予感があったと言った。つまりダレンが生まれた頃からだ。その頃にMr.Tiny が2度目に過去に戻って細工をしたのだろう。後のラーテンの物語の最後の事件の直後だろう。
Mr.Tiny が過去に戻る時、当時のMr.Tinyと鉢合わせしないのだろうか?その時の自分は、わかるのだろうか?そうしたMy.Tinyが過去を修正すると、エバンナやMr.Tall はわかるのだろうか?エバンナの口ぶりだとわかるようだけれど、どうわかるのか、想像するに少し興味深い。ある日突然、新しい過去バージョンの自分の記憶が出てくるのだろうか。
物語の最後で、little personになったダレンが、子供だった自分を脅してCirque Du Freakから追っ払った後に、Mr.tall を訪ねて、最初はlittle personが来た事に怪訝な顔をしたMr.tall が突然「まさかっ」と気が付く。これ、改めて1巻を読むと、Mr.tall は、最初に子供のダレンがスティーブと一緒にCirque Du Freak に行った時に、既にダレンとスティーブを知っていた。その時から、二人のうちどちらかが闇の帝王になる事、Mr.Tinyの操作で、Mr.Crepsleyが、ダレンをhalf-vampireにして弟子にする事、その先Mr.Crepsleyが死ぬ運命であろう事、すべてお見通しだった。Mr.Tall にとっても大きな運命の転換点だ。
そこにlittle Person になったダレンが現れた。そりゃ驚く。そして想像したのだろう。ダレンが闇の帝王にならなかった。けれど死んだとはいえ、Mr.Tiny がダレンをlittle person に作り替えたという事は、スティーブが勝ってダレンが負けて見捨てられた訳ではない。Mr.Tiny が自発的にダレンをlittle person に作り替えて過去に戻してダレンの人生を救おうとするなど考えられないから、エバンナの仕業だと思うのは当然。ただエバンナがダレンの人生を救おうと考える程だから、ダレンはエバンナの心を動かすだけの相当の事をやったのだろう。と考えると、Mr.tinyが散々細工して、2本の道に絞られて必ず闇の帝王が出現すると思われた未来が、そうならなかった事が推察できる。繊細なMr.Tall は、必ず闇の帝王が出現すると思われた未来が、そうならないであろう感動に、Mr.Tinyの計画から救われるダレンとMr.Crespley・・・Vampires とVampanezes の知り合いたち、もちろん自分とCirque Du Freakの未来・・、誰もの幸せを祈らずにはいられなかった。ただ唯一今後欠けるのは、これから自分に深く関わると思っていたダレンが自分と関わらなくなった事だけ。
私は扉を閉じた繊細なMr.Tallが、その夜感動でむせび泣きをしていても、驚かない。何しろダレンはMr.tinyの計画に逆らい自分の運命を自分で変えるという、Mr.Tallには出来ない事をやったのだから。
今度デモナータがあちらでテレビシリーズになるらしいけれど、ダレンシャンももう一度元の世界観に沿って映画化して欲しいな。渡辺謙のMr.Tallは勘弁。